「らしさ」をどう言葉にするか。不動産会社のブランド想起設計
この記事の要約(TL;DR)
- 多くの企業が持っている「自社らしさ」は、意外と言葉にされないまま眠っています
- 「事実→強み→想起させたい感情」という3ステップで言語化すると、施策に落とし込みやすくなります
- ライフステージ別にペルソナを描き分けることで、同じ企業でもターゲットごとに異なるメッセージ設計が可能になります
- 家電量販店が季節ごとに店内装飾・陳列・広告をセットで動かす発想は、住まいの検討理由が季節で変わるという特性上、デジタル施策にも応用できます
- 言語化したブランドイメージは、複数のキャンペーンを通じて一貫させることが重要です
マーケティング施策以前に必要な「らしさ」の言語化
前回までの記事(要件定義のコツ、HubSpot設計の勘所、定着化と伴走設計、新規開拓より「掘り起こし」を優先すべき理由)で、HubSpot環境の導入から運用開始、具体的なマーケティング施策のご提案例までをお話して参りました。
少しプロセスを戻して、具体的な施策を考える前に、実は多くの企業が見落としがちな工程があります。それが「自社らしさ」の言語化です。
地域密着や生活インフラとの相乗効果など、強みは意外と言葉にされていない
私たちが支援したプロジェクトでも、地域に根差した営業基盤や、生活インフラとの相乗効果など、他社にはない強みを持っているにもかかわらず、それが明確な言葉として整理されていないケースが多く見られました。強みは社内では当たり前すぎて、かえって言語化されにくいものです。

「事実→強み→想起させたい感情」という3ステップで言語化する
漠然と「らしさ」を考えようとすると議論が発散しがちです。実務では、次の3ステップに分けて言語化を進めると整理しやすくなります。
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事実の棚卸し:創業の経緯、事業の範囲、保有するアセットやネットワークなど、客観的な事実を洗い出す
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強みへの翻訳:その事実が競合と比べてどう差別化要因になっているかを言葉にする
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想起させたい感情への変換:ターゲットがその強みを知ったときに、どんな気持ちになってほしいかを定義する
例えば「地域に長く根差した事業基盤を持つ」という事実は、「引っ越しても長く付き合えそう」という安心感の想起につながる、というように、事実をそのまま訴求するのではなく、感情としてどう受け取ってほしいかまで設計するのがポイントです。
ライフステージ別にペルソナを描き分けると、施策の解像度が上がる
不動産のような検討期間が長い商材では、同じ「顧客」でもライフステージによって関心事がまったく異なります。
- 結婚・出産期:夫婦二人の暮らしから家族向けの住まいへの見直し。「将来の家族構成を見据えた提案」への関心が高い
- 子どもの進学期:学区や通学の利便性が検討の主軸になる。「教育環境に強い地域情報」への感度が上がる
- 独立・住み替え検討期:子どもの独立を機にコンパクトな住まいへ。「身軽に住み替えられる安心感」が響きやすい
- 相続世代:資産としての不動産をどう扱うかという相談ニーズ。「専門知識に基づいた中立的なアドバイス」への期待が強い
このようにライフステージごとにペルソナを描き分けることで、一つの企業が発信するメッセージであっても、届ける相手によって切り口を変える設計ができるようになります。
家電量販店の季節キャンペーンに学ぶ、施策設計の型
店内装飾・陳列・トーク・広告をセットで動かすという発想
季節ごとに店内の装飾を変え、陳列を見直し、接客トークを調整し、広告を出稿する家電量販店の動き方は、マーケティング施策設計の良い参考になります。一つの要素だけを変えるのではなく、複数の接点を連動させることで、ターゲットへの訴求力が高まります。
デジタル施策でも記事・資料・メール・広告をパッケージ化する
この発想をデジタル施策に置き換えると、ブログ記事、ダウンロード資料、メール、広告といった複数のアセットを一つのキャンペーンとしてパッケージ化し、セットで展開するという設計になります。個別にバラバラと動かすよりも、統一感のあるメッセージを届けやすくなります。

「年間ネタ帳」の具体例:季節ごとに変わる住まいの検討理由
住まいの検討理由は、季節によって変化する傾向があります。例えば、新生活が始まる春先は引っ越しや新居探しの相談が増え、ボーナス時期にあたる夏や冬は住み替えの本格検討が進みやすく、新学期を控えた秋口は学区を意識した住み替え相談が増える、といった具合です。こうした季節ごとの検討理由の変化をあらかじめ年間の「ネタ帳」として整理しておくことで、担当者が都度ゼロから企画を考える負担を減らし、かつターゲットの検討タイミングに合わせた訴求が可能になります。
「らしさ」の言語化を、実際の施策にどう落とし込むか(実プロジェクトより)
プロ目線の情報発信という切り口
言語化した「らしさ」を施策に落とし込む一つの切り口が、専門的な視点からの情報発信です。業界のプロとしての知見を発信することで、単なる情報提供にとどまらず、信頼感の醸成にもつながります。
言語化したブランドイメージを複数キャンペーンで一貫させる
重要なのは、一度言語化したブランドイメージを、単発の施策で終わらせず、複数のキャンペーンを通じて一貫させることです。年間を通じて複数回展開する施策であっても、根底にあるメッセージが揺らがないよう設計することで、ターゲットの記憶に残りやすくなります。
ブランド想起の設計は、一度作って終わりではない
「らしさ」の言語化とターゲットごとの想起イメージ設計は、一度作れば完成というものではありません。市場環境や顧客層の変化に合わせて、継続的に見直し、育てていくプロセスが求められます。地道な積み重ねが、長期的なブランド力の差につながります。
次回は、他業界の実例を交えながら、紹介施策とデータ活用による顧客接点強化についてご紹介します。
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