【成功事例】既存顧客のLTVを最大化!住宅設備メーカーのD2C戦略
この記事の要約(TL;DR)
- 課題:ある大手住宅設備機器メーカーでは、売上の横ばいが続き、従来の販売代理店経由のビジネスモデルでは「顧客と直接コミュニケーションが取れない」という課題を抱えていました。
- 解決の方向性:メーカーが直接顧客と繋がるD2C的なアプローチを取り入れ、既存顧客の「LTV(顧客生涯価値)」を最大化する方針へシフトしました。
- 施策:オフライン・オンラインを問わずあらゆる接点でLINE IDやメールアドレスを取得。専用のオウンドメディアを立ち上げ、MAツールとOneIDを活用して個客にパーソナライズされたステップメッセージを配信しました。
- 成果:能動的に反応する「アクティブ会員」が大幅に増加し、施策開始から2年間で既存顧客による自社ECサイトの売上が430%も増加する成果を上げました。
※本事例は、弊社が企業向け研修の中でも実際にご紹介している内容です。
※特定を避けるため、社名および一部数値は匿名・加工した上で掲載しております。
※本記事は下記記事の続きとなります。
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既存の販売チャネルの限界:顧客と直接繋がれない課題
システムキッチンやバスルームなど、水回りの住宅設備機器を開発・製造・販売する、ある大手住宅設備機器メーカーの事例をご紹介します。同社は確かな技術力とデザイン性で業界内でも高く評価されていると見られますが、経営課題として「売上の横ばい傾向」に直面していました。
売上の横ばいと、見えない既存顧客
マーケティング部門が現状を分析した結果、売上が伸び悩んでいる根本的な原因は「既存の販売チャネルの構造的な限界」にあることが見えてきました。
住宅設備機器という商材の特性上、同社の製品は直接消費者に販売されるわけではなく、ハウスメーカーや工務店といった販売代理店を通じて提案・販売されるのが一般的です。つまり、企業にとっての直接の顧客は「代理店」であり、実際に製品を使用する「エンドユーザー(生活者)」との間には物理的・心理的な距離が存在していました。
エンドユーザーと直接コミュニケーションを取る手段がないため、購入後の満足度を高めたり、追加のパーツや消耗品を提案(アップセル・クロスセル)したりする機会を自ら創出することができません。この「見えない既存顧客」という状況を打破しない限り、事業のブレイクスルーは望めない状態だったのです。
課題解決の鍵:デジタルを活用した「LTV(顧客生涯価値)の最大化」
そこで同社は、これまでの「代理店経由の新規販売」に偏重したモデルから脱却し、デジタルマーケティングを活用して既存顧客との関係性を深める戦略へと大きく舵を切りました。
メーカー主導の直接コミュニケーション(D2C)への転換
目指したのは、メーカー自らが消費者と直接繋がるD2C(Direct to Consumer)的なアプローチの導入です。具体的には、製品を購入していただいたお客様とのコミュニケーションパイプラインをデジタル上に構築し、「LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)」を最大化することを主要なKPIとして設定しました。
LTVを向上させるためには、製品購入後もお客様に「このメーカーの製品を選んで良かった」と感じてもらう「顧客体験(CX)」の向上が不可欠です。適切なタイミングで適切な情報やサポートを提供し、ファン(ロイヤルカスタマー)になってもらうことで、結果として自社ECサイトでの消耗品購入や、将来的なリフォーム時の再指名といった売上(アップセル・クロスセル)に繋げるというシナリオを描きました。
施策①:顧客との接点を作る「LINE・メールアドレスの取得」
LTV向上のシナリオを実現するために、まず立ちはだかった壁は「そもそもお客様に連絡する手段(連絡先)がない」ということでした。そこで最初に着手したのが、顧客との接点となるLINE IDやメールアドレスの取得促進です。
あらゆるタッチポイント(オフライン・オンライン)での登録促進
これまでは、製品購入時の「お客様登録」でメールアドレスの記入欄があっても任意であり、未記入のまま提出されるケースが大半でした。同社はここを改善すべく、部門間の垣根を越えてあらゆるタッチポイントで登録を促す施策を展開しました。
- 製品同梱チラシの刷新:「登録するとどんなメリットがあるのか(例:お手入れのコツが届く、保証の案内がある等)」を明確に訴求したチラシを作成し、製品に同梱。
- ショールームでの積極的な声がけ:営業担当者やアドバイザーに協力を仰ぎ、来場アンケート記入時にメールアドレスの登録やLINEの友だち追加を直接案内してもらうオペレーションを徹底。
- Webコンテンツを活用した登録導線:公式サイト内に「キッチン収納診断」などのユーザーが楽しめる診断コンテンツを用意し、診断結果を見るためにLINE登録やメールアドレス入力を必須化。
オフライン(ショールームや紙のチラシ)とオンライン(Webコンテンツ)の両輪で、社内を巻き込んだ地道な登録促進活動を続けた結果、施策開始から2年間でメールアドレスとLINE IDの取得数は500%増加しました(出典:自社実績データ、匿名加工済み)。デジタルマーケティングを展開するための強固な顧客基盤(リスト)が形成されました。

施策②:ロイヤルティを高める「専用Webサイトの新設」
連絡先を取得できても、企業目線の単なる営業メッセージばかりを送っていては、お客様はすぐに離れてしまいます。お客様にとって価値のある情報を提供するための「受け皿」として、既存顧客向けの専用オウンドメディア(Webサイト)を新設しました。
顧客の「暮らし」に寄り添い、お役立ち情報を提供する受け皿
これまでは、製品の仕様やカタログを載せた購入検討者向けのサイトはありましたが、購入後のお客様のロイヤルティを高めるためのコンテンツは不足していました。
新設したオウンドメディアでは、「長く綺麗に使うためのお手入れ方法」「キッチンの収納アイデア」「日々の料理が楽しくなるレシピ」など、お客様の実際の「暮らし」に寄り添うお役立ちコンテンツを豊富に用意しました。売り込み色を抑え、純粋に製品を通じたライフスタイルの充実をサポートすることで、メーカーに対する信頼感や愛着を育む場として機能させたのです。
施策③:ニーズに合わせた「細分化ステップメッセージの配信」
受け皿となるWebサイトを用意した上で、いよいよ取得したLINEやメールアドレスに対してアプローチを開始します。ここで最大の効果を発揮したのが、MA(マーケティングオートメーション)ツールを活用した「ステップメッセージの配信」です。
OneIDとMAツールの連携で、最適な情報をパーソナライズ
一律のメールマガジンを一斉配信するのではなく、同社は顧客データを「OneID」として統合しました。ショールームでヒアリングした情報、購入した製品の品番データ、Webサイトの閲覧履歴などを一つのIDに紐付け、MAツールを使って「誰に・いつ・どんな情報を届けるか」を細かく分岐させたのです。
例えば、ガスコンロを購入したお客様とIHヒーターを購入したお客様では、必要となるお手入れの方法や、消耗品の交換時期(メンテナンスサイクル)が全く異なります。購入した製品やオプションに合わせて、「使用開始から◯日後には、このお手入れ情報を送る」「浄水器を買った人には、◯ヶ月後にカートリッジ交換の案内を送る」といった具合に、シナリオを徹底的に細分化しました。
その数は、LINEメッセージで約200種類、メールで約100種類にのぼりました(出典:自社実績データ、匿名加工済み)。お客様一人ひとりの状況にピタリと合った情報が、絶妙なタイミングで届くため、「自分のための有益な情報だ」と認識されやすくなります。
LINEを活用したアクティブな顧客接点の創出
また、現代の消費者に身近な「LINE」を主要なコミュニケーションツールとして採用したことも大きな成功要因です。メールよりも開封率が高いLINE上で、リッチメニューや自動応答(FAQチャットボット)を組み合わせることで、手軽に悩みや疑問を解決できる環境を整えました。
「こんな収納グッズが便利です」といったLINEメッセージから、オウンドメディアの詳しい解説記事へ誘導し、最終的に自社ECサイトでの購入へとスムーズに繋げる、という美しい動線が確立されたのです。
成果:アクティブ会員の増加と自社EC売上430%アップ
一連の施策を通じて、企業からのメッセージを開封し、リンクをクリックし、実際にサイトを訪れる「能動的でアクティブな会員」の数が劇的に増加しました。
自分に合った役立つ情報が届くことでメーカーへの信頼が高まり、「浄水器のカートリッジを交換しよう」「このメーカーがおすすめする収納パーツを買ってみよう」という行動が自然と促された結果、施策開始から2年間で、既存顧客による自社ECサイトの売上は430%増加しました(出典:自社実績データ、匿名加工済み)。
まとめ:LTV向上には「購入後」の顧客体験(CX)が不可欠
この大手住宅設備機器メーカーの成功事例は、「売って終わり」になりがちなBtoBtoCビジネスにおいて、デジタルマーケティングがいかに強力な武器になるかを証明しています。
代理店任せにせず、メーカー自らが顧客との接点(LINEやメール)を開拓し、OneID化されたデータとMAツールを駆使して、購入後の顧客体験(CX)を徹底的に高める。一見地道なステップメッセージの構築やコンテンツ制作が、結果としてLTVの最大化とEC売上の劇的な向上という大きなビジネスインパクトをもたらしました。
「既存顧客からの売上が伸び悩んでいる」「お客様の顔が見えず、継続的なコミュニケーションが取れていない」といった課題を抱える企業にとって、このD2C的なアプローチとデータ活用戦略は、強力なブレイクスルーのヒントになるはずです。
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デジタル人材は貴重で希少です
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