【実践編】顧客の心を掴む4つのフレームワークとインサイトの見つけ方
この記事の要約(TL;DR)
- デジタルマーケティングで成果を出すためには、ツールを導入する前に「顧客理解」を深めるためのフレームワークの活用が不可欠です。
- 「ペルソナ設計」「カスタマージャーニーマップ」「コンセプトダイアグラム」「コンテンツマップ」の4つの手法を連携させることで、精度の高い施策を導き出せます。
- 消費者が言葉にできる「顕在ニーズ」や「潜在ニーズ」だけでなく、本人も気付いていない深層心理である「インサイト」を捉えることが購買行動を強く後押しします。
- これら4つの手法を活用し、バラバラの顧客接点(点)をストーリー(線)として結びつけることが、デジタル時代のマーケティング成功の鍵となります。
※本記事は弊社が企業向け研修の中でお話した内容を元に作成しております。
なぜデジタルマーケティングに「フレームワーク」が必要なのか?
これまでの連載で、消費者行動の変化(第1回)や、注文住宅ビルダーおよび住宅設備機器メーカーの具体的な成功事例(第2回・第3回)をご紹介してきました。これらの成功事例に共通しているのは、MA(マーケティングオートメーション)などの高度なデジタルツールを導入する「前」の段階で、徹底的に顧客の心理と行動を分析している点です。
どんなに優れたツールを導入し、膨大な顧客データ(OneID)を蓄積したとしても、「誰に、どのような情報を、どのタイミングで届けるべきか」という戦略が定まっていなければ、ツールは宝の持ち腐れとなってしまいます。
「顧客起点」をチーム全体で共有するための共通言語
見えない顧客の心を掴み、精度の高い施策を立案するためには、マーケティング担当者の「勘」や「経験」に頼るのではなく、論理的に顧客を理解するためのフレームワークが欠かせません。
フレームワークを活用することで、顧客の解像度が上がり、「顧客起点(顧客視点)」のアプローチが可能になります。さらに、作成したフレームワークは、マーケティング部門だけでなく、営業部門やカスタマーサポート部門など、社内のあらゆる関係者が同じ目線でお客様を理解するための「共通言語」としても機能します。
今回は、数あるマーケティング手法の中でも、デジタル施策を具体化するために特に有効な「4つの手法」を順番に解説します。
実践!顧客理解を深め施策を導く4つの手法
ペルソナ設計(ターゲットの解像度を上げる)
施策の第一歩は、ターゲットとなる架空の顧客像「ペルソナ」を描き出すことです。単なる「30代・男性・会社員」といったデモグラフィック(属性)情報だけでなく、休日の過ごし方、よく利用するSNS、仕事に対する価値観、抱えている悩みや願望などを、まるで実在する人物のように詳細に設定します。
ペルソナを精密に設計することで、「この人にはどんなデジタルメディアで訴求すべきか」「どのようなトーン&マナーのメッセージが響くか」といったコミュニケーション戦略の軸がブレなくなります。既存のCRMデータや営業担当者へのヒアリング、顧客アンケートなどを掛け合わせ、自社にとって理想的な、かつリアリティのあるペルソナを策定しましょう。
カスタマージャーニーマップ(行動とタッチポイントの可視化)
ペルソナが定まったら、次はその人物が「認知」から「購入」、そして「共有」に至るまでのプロセスを時系列で可視化する「カスタマージャーニーマップ」を作成します。
各フェーズ(認知、興味・関心、比較・検討など)において、顧客が「どのタッチポイント(テレビ、SNS、Webサイト、店舗など)に触れ」「どのような行動をとり」「その時何を考えているか」をマッピングしていきます。
カスタマージャーニーマップを作成することで、顧客の行動や態度変容の文脈(コンテキスト)が明らかになります。これにより、「このフェーズではSNS広告で認知を広げよう」「このフェーズではメールで割引クーポンを送ろう」といった、最適なタイミングとチャネルでのアプローチ方法が見えてきます。
コンセプトダイアグラム(心理変容と中間KPIの整理)
カスタマージャーニーマップが「行動」に焦点を当てているのに対し、「コンセプトダイアグラム」は顧客の「心理変容」に焦点を当てるフレームワークです。
例えば、「家に関する知識を得たい」という状態から、「実際にモデルハウスを見てみよう」という状態へ顧客の心理を動かすためには、その間にどのような感情の揺れ動きがあるでしょうか。「時間をかけて調べたい」という心理もあれば、「情報収集に疲れたから手っ取り早く実物を見たい」という心理もあるはずです。
コンセプトダイアグラムでは、こうした顧客の心理状態を付箋などでマッピングし、「次の感情へ移動させるためには、どんな情報が必要か?」「それを計測するための中間KPI(特定のページ閲覧数やメール開封率など)は何に設定すべきか?」を整理します。これにより、MAツールで組むべきシナリオの方向性が明確になります。
コンテンツマップ(ニーズと施策の紐付け)
顧客の心理変容と必要な情報が整理できたら、最後はそれを実際の「コンテンツ」に落とし込む「コンテンツマップ」を作成します。
「リードナーチャリングの始め方を知りたい」というニーズに対しては「eBookやウェビナー」を、「クリックしたくなるタイトルを知りたい」というニーズに対しては「Web広告やeBook」を割り当てる、といった具合に、テーマごとに必要なコンテンツ(記事、動画、メール文面など)と担当者を紐付けます。
コンテンツマップを作成することで、誰が・いつ・どのコンテンツを制作すべきかの優先順位が明確になり、効率的に施策を実行・運用することが可能になります。

顕在ニーズ・潜在ニーズ・そして「インサイト」へ
これら4つのフレームワークを回す上で、マーケターが常に意識しなければならないのが、顧客の「ニーズの深さ」です。デジタルマーケティングで真に顧客の脳内を掴むためには、表面的な言葉に惑わされず、その奥底にある心理にアプローチする必要があります。
顧客自身も気付いていない深層心理(インサイト)を見つけ出す
顧客のニーズは、大きく3つの階層に分けられます。
顕在ニーズ:消費者自身が認識しており、言葉にできるニーズです。「機能が良い」「価格が安い」といった、分かりやすいウォンツ(欲求)がこれに当たります。
潜在ニーズ:本人ははっきりと認識していないものの、提示されると「これすごい!」「いいね!」と引き出されるニーズや願望です。
インサイト:本人すら全く把握していない、無意識の奥底にある深層心理です。これは顧客の声から直接聞くことはできず、マーケターがデータや行動観察から「仮説」として導き出す必要があります。
「インサイト」こそが購買行動を強く後押しする
情報が溢れる現代において、顕在ニーズ(機能や価格の優位性)を満たすだけでは競合との価格競争に巻き込まれてしまいます。
真に顧客を動かし、購買行動を強く後押しするためには、この「インサイト(深層心理)」を見つけ出し、購入意図へと育てていくことが重要です。インサイトに刺さるメッセージや、感情移入・愛着を抱かせる情報を提供することで、単なる「興味」は「強い購買意図」へと変わります。
ペルソナやカスタマージャーニーを作成する際は、常にお客様の「インサイトはどこにあるのか?」を問い続けることが、デジタルマーケティング成功の分水嶺となります。

まとめ:4つの手法を連携させ、点と点を線で結ぶ
「ペルソナ」「カスタマージャーニーマップ」「コンセプトダイアグラム」「コンテンツマップ」。これら4つのフレームワークは、単独で完成させるものではありません。
ペルソナで「誰に」を定め、ジャーニーマップで「いつ・どこで」を把握し、コンセプトダイアグラムで「どのような心理変容を促すか」を描き、コンテンツマップで「具体的な武器(施策)」を用意する。これらが一気通貫で連動して初めて、バラバラだった顧客接点(点)が、一つの美しいストーリー(線)として結びつきます。
第1回から解説してきた通り、現代の消費者はAISASのプロセスに沿って複雑な情報収集を行っています。だからこそ、企業は顧客データをOneID化し、フレームワークを用いてインサイトを掘り下げ、顧客起点のコミュニケーションを地道に繰り返していく必要があります。これこそが、激変する市場環境において企業が持続的に成長するための、デジタルマーケティングの本質なのです。
デジタル時代に対応した顧客起点のアプローチを組織として実践し、マーケティング成果を最大化するためには、現場の担当者が体系的なスキルを身につけることが不可欠です。クリエイティブホープでは、実務に直結する次世代マーケター育成のための特別なオフライン研修プログラムをご用意しています。
本研修プログラムは、消費者行動の変化を捉えた戦略立案から、デジタルとリアルのチャネルミックス、OneIDを活用したデータドリブンな施策設計にいたるまで、ワークショップを通じて体得できる実戦型のオフライン研修です。バラバラの施策を繋ぎ、成果を生み出すマーケティング組織への変革を強力に後押しします。
とはいえ、「ペルソナ」から「コンテンツマップ」まで、4つの手法を自社だけで整合性を保ちながら描き切り、さらにそれをHubSpotなどのツール上で実際のシナリオやコンテンツ配信に落とし込んでいくには、専門的な知見と実務経験が欠かせません。「フレームワークは作ってみたものの、施策への落とし込み方が分からない」「MAツールを導入したが、シナリオ設計に自信が持てない」——そうしたお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
デジタル人材は貴重で希少です
デジタルマーケティングの基礎を正しく理解し、実務に落とし込める人材は、実はそう多くありません。しかしそうした「デジタル人材」こそ、採用市場では希少で、育成には時間がかかります。
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