SalesforceからHubSpotへ移行する完全ガイド|判断基準・手順・費用・失敗しないための設計
この記事の結論
- 移行の成否を決めるのは、データを運べるかどうかではなく、Salesforceの設計思想をそのまま持ち込まないことです。オブジェクト構造の考え方が根本的に違います。
- 移行で最も危険なのは、「使われていないカスタム項目」をそのまま移してしまうこと。移行はデータを整理する最大の機会です。
- 費用は50万〜300万円が目安ですが、金額を決めるのはレコード件数ではなくデータ構造の複雑さと、既存の仕様書の有無です。
この記事について
本記事は、HubSpotプラチナパートナーである株式会社クリエイティブホープが編集しています。2015年よりHubSpotパートナーとして活動し、SalesforceからHubSpotへの移行支援、他CRMからのCRM移設支援をサービスとして提供しています。他社パートナーからの引き継ぎ実績も10社以上あります。
1. そもそも移行すべきか ― 判断の分かれ目
移行ありきで進めないでください。Salesforceには明確な強みがあり、要件によっては移行しないほうが合理的です。
移行を検討する価値があるケース
- 現場が入力しない。項目が多すぎる、画面が複雑で使われていない
- 管理コストが高い。設定変更のたびに外部ベンダーへの依頼が必要
- マーケティングと営業が分断している。MAツールとSFAが別々で、データが繋がっていない
- ライセンスコストが実態と合わない。使っていない機能に払っている
- Webサイト・コンテンツと顧客データを統合したい
移行しないほうがよいケース
- 大規模な独自業務ロジックをApexで実装しており、それが事業の中核になっている
- 複雑な承認ワークフローや、極めて細かい権限制御が業務要件になっている
- Salesforceエコシステムの特定アプリに業務が依存している
- 全社で数百〜数千ユーザーが稼働しており、移行の変更管理コストが便益を上回る
「併用」という第三の選択肢
全面移行だけが選択肢ではありません。HubSpotとSalesforceには標準の双方向同期があり、以下のような分担が可能です。
- マーケティングとインサイドセールスはHubSpot、フィールドセールス以降はSalesforce
- 特定事業部のみHubSpot、他事業部はSalesforce継続
まず併用で運用し、実績を見てから全面移行を判断するという進め方は、リスクが最も低くなります。
2. 【最重要】設計思想の違いを理解する
移行の失敗は、ほぼすべてここから始まります。
オブジェクト構造の考え方が違う
| Salesforce | HubSpot | |
|---|---|---|
| 見込み客の扱い | リードという独立オブジェクト。商談化時に「リード変換」で取引先/取引先責任者/商談へ変換 | コンタクトに一本化。ライフサイクルステージで状態を管理 |
| 中心概念 | 取引先(Account)中心 | コンタクト中心 |
| カスタマイズ | 深いカスタマイズが前提 | 標準機能で組む思想 |
| 自動化 | Flow、Apex | ワークフロー(ノーコード中心) |
この違いを踏まえないと、こうなります。
Salesforceの「リード」をHubSpotで再現しようとして、カスタムオブジェクトを作る。すると、HubSpotの標準機能(ライフサイクルステージ、リードスコアリング、レポート)がすべて使えなくなります。HubSpotの標準機能は、コンタクト中心の設計を前提に作られているからです。
移行の原則
Salesforceの設計を移植するのではなく、業務要件だけを取り出して、HubSpotの流儀で組み直す。
これが移行プロジェクトの基本方針になります。データを運ぶ作業より、業務要件をSalesforceの実装から切り離す作業のほうが難しく、時間もかかります。
3. 移行前にやるべき「棚卸し」
移行を機に、データと設定を整理してください。Salesforceを長く使っているほど、不要な資産が蓄積しています。
棚卸しリスト
| 対象 | 確認すること |
|---|---|
| カスタム項目 | 直近1年で更新された項目はどれか。入力率は何%か |
| レコードタイプ | 実際に使い分けられているか |
| 入力規則・自動採番 | 業務上必要か、過去の名残か |
| Apex/Flow | 何のために作られたか。今も必要か |
| レポート・ダッシュボード | 誰が実際に見ているか |
| 重複レコード | 名寄せの基準は何にするか |
| インストール済みアプリ | HubSpotに同等機能があるか、代替が必要か |
| 項目履歴 | 移行対象にするか(HubSpotの仕様と照らして判断) |
「入力率」が最も有効な判断基準
カスタム項目の要否は、議論では決まりません。入力率を出してください。
入力率が10%を下回る項目は、実質的に使われていません。それを移行すると、HubSpot側に「誰も入れない項目」が最初から存在することになり、運用初日から形骸化が始まります。
移行は、データを減らす最大の機会です。この機会を逃すと、次は数年先になります。
4. 移行の手順
Phase 1:要件整理と設計(3〜6週間)
- 現行Salesforceの棚卸し(前章)
- 業務プロセスのヒアリング(Salesforceの実装ではなく、実際の業務を聞く)
- HubSpot側のオブジェクト設計
- プロパティ設計と、項目マッピング表の作成
- ライフサイクルステージの定義
- パイプラインと取引ステージの設計
- 権限設計
ここが最も重要な工程です。設計を飛ばして移行だけ先に行うと、後から必ずやり直しになります。
Phase 2:データ移行(2〜4週間)
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1. エクスポート | Salesforceから対象データを抽出 |
| 2. クレンジング | 重複排除、表記ゆれの統一、不要データの除外 |
| 3. 変換 | 項目マッピング表に従ってHubSpot形式へ |
| 4. テスト移行 | サンドボックスまたは少量データで検証 |
| 5. 検証 | 件数、関連付け、値の正確性を確認 |
| 6. 本番移行 | 段階的に実施 |
移行順序には依存関係があります。会社(Company)→ コンタクト → 取引 → アクティビティ、という順で進めないと、関連付けが崩れます。
Phase 3:構築と検証(3〜6週間)
- ワークフローの構築(Salesforceの自動化を、HubSpotの流儀で再設計)
- フォーム、メールテンプレート
- レポート・ダッシュボード
- 外部システム連携の再構築
- 権限設定
Phase 4:並行稼働とトレーニング(2〜4週間)
いきなり切り替えないでください。一定期間は両システムを並行稼働させ、データの整合性と業務の回り方を確認します。
- 管理者向けトレーニング
- エンドユーザー向けトレーニング
- マニュアル整備
- 問い合わせ窓口の設置
Phase 5:切り替えとSalesforce停止
並行稼働で問題がないことを確認してから、Salesforceを停止します。ライセンス契約の更新時期と、切り替え時期を合わせておくとコスト効率が上がります。
全体で3〜6か月が現実的なスケジュールです。
5. 移行でつまずきやすい7つのポイント
1. リード変換の概念をそのまま持ち込む
最も多い失敗です。HubSpotではライフサイクルステージで表現します。
2. 使われていないカスタム項目を全部移す
入力率で判断してください。
3. 重複データをそのまま移す
移行後の名寄せは、移行前より難しくなります。必ず移行前にクレンジングすること。
4. 添付ファイルとメール履歴の扱いを決めていない
どこまで移行するかを事前に決めてください。全件移行はコストが跳ね上がります。
5. レポートを移行対象だと思っている
レポートは移行できません。HubSpot側で作り直しになります。誰がどの意思決定に使っているかを整理し、必要なものだけ再構築してください。
6. 外部システム連携を後回しにする
Salesforce前提で組まれた連携は、すべて作り直しです。移行計画の初期段階で棚卸ししてください。
7. 現場のトレーニングを軽視する
画面も操作も変わります。ツールが良くなっても、使われなければ意味がありません。
6. 費用の目安
| ケース | 目安 |
|---|---|
| シンプルな移行(データ構造が単純、連携なし) | 50万円前後 |
| 標準的な移行(設計の作り直しを含む) | 100万〜200万円 |
| 複雑な移行(カスタムオブジェクト、外部連携、大量データ) | 200万〜600万円 |
金額を左右するのはレコード件数ではなく、以下の要素です。
- カスタム項目の数と、マッピングの複雑さ
- 重複データの多さ、クレンジングの必要量
- カスタムオブジェクトの有無
- 外部システム連携の数と難易度
- 既存Salesforceの設計ドキュメントが存在するか
最後の項目は見落とされがちですが、大きな変数です。ドキュメントがない場合、既存設定の意図を解読するところから始まります。
費用の全体像は HubSpot導入支援の費用相場と見積もりの読み方 をご覧ください。
7. パートナー選びで確認すべきこと
移行は、やり直しがきかない領域です。以下を確認してください。
| 確認項目 | 質問 |
|---|---|
| Data Migration Accreditation | 「HubSpotのData Migrationアクレディテーションを保有していますか」 |
| 移行実績 | 「Salesforceからの移行実績は何件ですか。最大レコード件数は」 |
| 設計方針 | 「弊社のSalesforceのリード運用を、HubSpotではどう表現しますか」 |
| クレンジング | 「重複データの名寄せ基準は、どう設計しますか」 |
| 連携 | 「現在の外部連携を、移行後どう再構築しますか」 |
| ドキュメント | 「項目マッピング表と設計書は成果物に含まれますか」 |
Data Migration Accreditation は、HubSpot公式が「他CRMからの移行実績を再現可能な実務として構築している」と認定した証です。申請にはPlatinum以上のティアと、実プロジェクトのケーススタディ審査が必要です。詳しくは HubSpotアクレディテーション解説 をご覧ください。
3つ目の質問が最も有効です。この問いに対する答えで、そのパートナーが設計思想の違いを理解しているかが分かります。
よくある質問(FAQ)
Q1. Salesforceのデータはすべて移行できますか?
標準的なオブジェクト(取引先、取引先責任者、リード、商談、活動履歴)は移行できます。ただしレポート、ダッシュボード、Apex、Flowは移行できず、HubSpot側で作り直しになります。添付ファイルとメール履歴は、移行範囲を事前に決めてください。
Q2. 移行期間はどれくらいですか?
設計から切り替えまでで3〜6か月が現実的です。データ移行そのものは数週間ですが、要件整理と設計、並行稼働とトレーニングに時間がかかります。
Q3. SalesforceのリードはHubSpotでどう扱いますか?
コンタクトに一本化し、ライフサイクルステージで状態を管理します。リードをカスタムオブジェクトで再現するのは推奨されません。HubSpotの標準機能が使えなくなるためです。
Q4. 移行中も営業活動は続けられますか?
はい。一定期間の並行稼働を推奨します。ただし二重入力の負荷が発生するため、期間はできるだけ短く(2〜4週間程度)設計してください。
Q5. 両方を併用することはできますか?
できます。HubSpotとSalesforceには標準の双方向同期があり、マーケティングはHubSpot、営業はSalesforceといった分担が可能です。全面移行の前段階として併用を挟むと、リスクを抑えられます。
Q6. 移行費用はいくらですか?
50万〜600万円が目安です。レコード件数より、データ構造の複雑さ、カスタム項目の数、外部連携の有無、既存ドキュメントの有無で変動します。
Q7. 自社だけで移行できますか?
コンタクト数が数千件規模で、カスタム項目が少なく、外部連携がなければ可能性はあります。ただし設計の作り直しを伴う場合、第三者の設計レビューだけでも受けることを推奨します。移行はやり直しがききません。
まとめ
- 移行ありきで進めない。併用という選択肢もあります
- Salesforceの設計を移植しない。業務要件だけを取り出し、HubSpotの流儀で組み直します
- リードはコンタクト+ライフサイクルステージで表現する。カスタムオブジェクトでの再現は避けてください
- 入力率でカスタム項目を判定する。移行はデータを減らす最大の機会です
- 重複は移行前にクレンジングする。移行後の名寄せは難易度が上がります
- レポートと自動化は作り直し。移行対象ではありません
- Data Migration Accreditationを確認する。移行はやり直しがききません
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移行のご相談
株式会社クリエイティブホープは、HubSpotプラチナパートナーとして、SalesforceからHubSpotへの移行支援、他CRMからのCRM移設支援を提供しています。
まず現状評価だけ、というご依頼を歓迎しています。現行Salesforceの棚卸しと、HubSpotでの設計方針の策定までを切り出してご依頼いただけます。ここが固まれば、移行の見積もり精度は大きく上がります。
ご相談いただける内容
- そもそも移行すべきか、併用すべきかを相談したい
- 現行Salesforceの棚卸しをしてほしい
- リード運用をHubSpotでどう設計するか知りたい
- 外部システム連携を含めた移行計画を立てたい
- 移行費用の目安を知りたい
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編集:株式会社クリエイティブホープ(HubSpot Platinum Partner)
2015年よりHubSpotパートナー/有資格者30名以上/他社からの引き継ぎ実績10社以上
HubSpot「Customer First in Japan 2021」「Grow Better at Community 2021」受賞
著書『HubSpotワンストップマーケティング』(フォレスト出版・2022年)
https://www.creativehope.co.jp/hubspot
最終更新日:2026年8月29日