HubSpotパートナーの乗り換え・引き継ぎ完全ガイド|判断基準と、失敗しないための全手順

HubSpotパートナーの乗り換え・ 引き継ぎ完全ガイド 判断基準と、失敗しないための全手順

この記事の結論

  1. 現在の支援に不満があっても、いきなり乗り換えないでください。原因がパートナー側にあるとは限らず、自社側の要因であれば相手を変えても再発します。
  2. 最初の一手は乗り換えではなく、第三者による現状評価(セカンドオピニオン)です。1〜3か月の引き継ぎ期間の大半は「現状把握」に費やされます。
  3. 引き継ぎで最大のコストになるのは、データでもワークフローでもなく、「なぜこの設計になっているのか」という設計意図の喪失です。

この記事について

本記事は、他社パートナーからの引き継ぎを10社以上経験しているHubSpotプラチナパートナー、株式会社クリエイティブホープが編集しています。2015年よりHubSpotパートナーとして活動し、1社ごとに長期間伴走する深耕型の支援を方針としています。

特定のパートナーを批判する意図はありません。実際に引き継ぎの現場で起きていることを共有し、発注者が適切に判断できる材料を提供することを目的としています。


この記事でわかること

  • 乗り換え相談が持ち込まれる3つのパターンと、それぞれの適切な対処
  • 乗り換えを検討すべき8つのサインと、セルフチェックリスト
  • 乗り換える前に必ず確認すべき「自社側の3つの要因」
  • 引き継ぎコストの正体である「設計意図の喪失」とは何か
  • 乗り換え前に必ず確保すべき8つのもの(実務チェックリスト)
  • 引き継ぎの手順と、1〜3か月の内訳
  • 契約解除とライセンスの扱い
  • 次は同じ失敗をしないための、契約時に決めておく5つのこと

1. 乗り換え相談は、3つのパターンから始まる

実際に持ち込まれる相談は、大きく3つに分かれます。どのパターンかによって、最初にやるべきことが違います。

パターンA:現在の支援に不満がある

最も多い入口です。「構築はしてもらったが業務に合っていない」「相談しても期待した反応が返ってこない」といった状態で、現状把握を含めた引き継ぎを依頼されるケースです。

このパターンでは、まず現状を客観的に把握することが必要です。不満の内容が「仕様の問題」なのか「コミュニケーションの問題」なのか「そもそも契約範囲外だった」のかで、対処が根本的に変わるためです。

パターンB:第三者による評価がほしい

乗り換えを決めているわけではないが、現在の支援内容が妥当なのか判断がつかないというケースです。社内にHubSpotを評価できる人材がいない場合、これは合理的な相談です。

この場合、必要なのは乗り換えではなくアセスメント(現状評価)です。評価の結果、現在のパートナーを継続するのが最善だという結論になることもあります。

パターンC:社内の担当者が退職した

見落とされがちですが、実際に多いパターンです。HubSpotを理解していた社内担当者が辞めてしまい、残されたメンバーが何がどう動いているのか分からないという状態です。

このパターンでは、パートナー側に問題がないケースも少なくありません。必要なのは、現行の仕組みを言語化して社内に定着させ直すことです。


2. 【診断】乗り換えを検討すべき8つのサイン

実際の引き継ぎ現場で繰り返し見られる状態を挙げます。該当数が多いほど、現状の構造に問題があります。

サイン1:ドキュメントが存在しない

設計書、プロパティ定義、ワークフローの一覧と目的、連携仕様書。これらが一切ないまま運用されているケースがあります。

問題は、ドキュメントがないこと自体ではなく、担当者が変わった瞬間に誰も触れなくなることです。ドキュメントは、パートナーのためではなく発注者の資産として必要です。

サイン2:「なぜこの設計なのか」を誰も説明できない

最も深刻なサインです。オブジェクト構造、カスタムプロパティ、ワークフローが、なぜその仕様になっているのか。設計した本人以外に説明できる人がいない状態です。

この状態では、手を加えることそのものが危険になります。詳しくは4章で解説します。

サイン3:業務フローが整理・定義されていない

CRMは業務フローの写し絵です。業務フロー自体が整理されていないまま構築されると、ツール上の設計も定義が曖昧なまま固まります。

「このライフサイクルステージはどういう状態を指すのか」「この取引ステージに進む条件は何か」に社内で答えが揃わない場合、このサインに該当します。

サイン4:説明が専門的すぎて理解できない

パートナーの説明が専門用語中心で、自社の言葉に翻訳されていない状態です。

これは能力の問題というより、言語化の問題です。ただし結果として、発注者は自分たちのシステムを理解できないまま運用することになります。

サイン5:テンプレートの導入で終わっている

構築はされたが、自社の業務に合わせる工程が省かれているケースです。標準的なパイプライン、標準的なプロパティ、標準的なワークフローが入っているだけの状態です。

すべてを自社仕様に合わせる必要はありません。しかし、クリティカルな業務プロセスがツール上で表現できていないなら問題です。

サイン6:契約範囲の中でできることしかやらない

契約期間と金額の枠内で完結することしか提案されない状態です。

「それは契約範囲外です」という回答自体は正当です。問題は、範囲外に重要な課題があると分かっていながら、それを指摘しない場合です。範囲外であっても課題として提起し、次のフェーズを提案するのが本来の姿です。

サイン7:継続支援が前提になっていない

導入後の運用、改善、定着についてそもそも設計に含まれていないケースです。初期構築だけを請け負い、納品後の関与を想定していない体制がこれにあたります。

ビジネスモデルとして成立しているので、それ自体は悪ではありません。しかし発注者側が「導入後も伴走してもらえる」と期待していた場合、そのギャップが不満になります。

サイン8:成果に関する説明が薄い

「何をやったか」の報告はあるが、「その結果どうなったか」「他社ではどう成果が出たか」の説明が乏しい状態です。

成果の説明ができないのは、成果が出ていないか、成果を測る設計になっていないかのどちらかです。どちらも問題です。

セルフチェック

以下のうち、いくつ当てはまるかを数えてください。

[  ] 設計ドキュメントを受け取っていない
[  ] ワークフローの一覧と、それぞれの目的を説明できない
[  ] カスタムプロパティが何個あるか把握していない
[  ] 「なぜこの設計なのか」を社内で説明できる人がいない
[  ] 定例で報告は受けるが、次に何をすべきかが分からない
[  ] 質問に対する回答が専門的で、理解しきれていない
[  ] 業務プロセスの一部がツール上で表現できていない
[  ] 契約更新のたびに「このまま続けるべきか」と迷っている
[  ] ポータルのスーパー管理者が自社にいない、または誰か分からない

3つ以下:現行パートナーとの対話で改善できる可能性が高い状態です。まず要望を明確に伝えてください。
4〜6つ:第三者による現状評価を検討する段階です。
7つ以上:構造的な問題がある可能性が高く、引き継ぎを含めた検討が必要です。


3. ただし、乗り換える前に確認してほしいこと

不満の原因がパートナー側にあるとは限りません。実際の引き継ぎ現場では、自社側に要因があるケースも同程度に存在します。ここを確認せずに乗り換えると、相手を変えても同じことが起きます

要因1:発注側がHubSpotを理解していない

これは能力の問題ではなく、関与量の問題であることがほとんどです。CRMは業務の写し絵なので、業務を知っている自社側が理解しないまま進むと、どんなに優秀なパートナーでも正しい設計にはたどり着けません。

確認する質問:定例に出席しているのは誰ですか。その人は自社の業務プロセス全体を説明できますか。

要因2:担当者が退職し、経緯が失われた

前任者とパートナーの間で合意されていた設計思想が、引き継ぎされずに消えているケースです。この場合、パートナー側は当初の合意通りに動いているだけの可能性があります。

確認する質問:現在の仕様について、パートナー側に決定の経緯を尋ねましたか。

要因3:要件を伝えきれていなかった

「言わなくても分かってくれるはず」という期待が、要件として伝わっていなかったケースです。特に業界固有の商習慣は、明示的に伝えなければ設計に反映されません。

確認する質問:不満に感じている点は、契約時または要件定義時に明示的に伝えていましたか。


結論として、乗り換えの判断はこうしてください。

状況 取るべき行動
要望を明確に伝えていない まず伝える。改善されるなら乗り換え不要
伝えたが改善されない 現状評価を依頼し、原因の所在を特定する
契約範囲外が原因 範囲の見直しを交渉する。それでも合意できなければ検討
設計思想そのものが自社と合わない 引き継ぎを検討する
担当者退職により社内が分からない 乗り換えではなく、現状の言語化を依頼する

4. 引き継ぎ最大のコストは「設計意図の喪失」

ここが本記事の中核です。

引き継ぎで最も時間がかかるのは、データ移行でもワークフローの再構築でもありません。「なぜこの設計になっているのか」を解読する作業です。

設計意図とは何か

HubSpotのポータルには、無数の判断の結果が積み重なっています。

  • なぜこのカスタムオブジェクトを作ったのか
  • なぜこのプロパティは必須ではなく任意なのか
  • なぜこの取引ステージは5段階なのか
  • なぜこのワークフローは、この条件で分岐しているのか
  • なぜこの連携は日次バッチで、リアルタイムではないのか

それぞれに、当時の業務要件と制約に基づく理由があったはずです。しかしその理由が記録されていなければ、後任は「何が動いているか」しか分かりません。

なぜこれが致命的なのか

設計意図が分からない状態では、手を加えることが危険になります

  • 不要に見えるプロパティを削除したら、実は月次レポートの集計軸だった
  • 冗長に見えるワークフローを統合したら、営業部門固有の例外処理が消えた
  • 使われていないパイプラインを整理したら、年に一度の特殊案件用だった

結果として、誰も触れないまま放置されるという状態に至ります。「HubSpotが形骸化した」と言われる状態の多くは、この構造から生まれています。

引き継ぎ側が実際にやること

新しいパートナーは、以下をリバースエンジニアリングすることになります。

対象 解読する内容
オブジェクト構造 どの業務単位を、どのオブジェクトで表現しているか
プロパティ 何のために作られ、どこで使われているか。重複はないか
ライフサイクルステージ 各ステージが指す実際の状態は何か
パイプライン・取引ステージ 遷移条件と、営業プロセスとの対応
ワークフロー 目的、トリガー、他ワークフローとの依存関係
リスト 動的か静的か。どこで参照されているか
連携 同期方向、頻度、マッピング、失敗時の挙動
レポート・ダッシュボード 誰がどの意思決定に使っているか

この作業に、引き継ぎ期間の大半が費やされます。構築そのものより、解読のほうが時間がかかるのです。

だから「現状評価」から始まる

引き継ぎの相談が、多くの場合まずアセスメント(現状評価)から始まるのはこのためです。評価なしに再構築を始めると、必ず何かを壊します。


5. 最初の一手は「乗り換え」ではなく「現状評価」

セカンドオピニオンという選択肢

医療と同じで、判断を変えるかどうかを決める前に、第三者の見立てを取るという手があります。

現状評価では、以下が明らかになります。

  • 現在の設計が、自社の業務プロセスをどの程度表現できているか
  • どこにクリティカルな問題があり、どこは許容範囲か
  • 問題の原因が、パートナー側にあるのか自社側にあるのか
  • 改善に必要な工数と期間の見積もり
  • 現行パートナーを継続する場合の、次に依頼すべき内容

評価の結果、「現行パートナーを継続すべき」という結論になることもあります。その場合でも、何を依頼すべきかが明確になるという価値が残ります。

現状評価のメリット

比較 いきなり乗り換え まず現状評価
初期コスト 高い 低い
意思決定の質 感情に左右されやすい 事実ベースで判断できる
現行パートナーとの関係 悪化しやすい 継続の選択肢が残る
社内の合意形成 説明が難しい 評価結果を根拠にできる
リスク 引き継ぎ失敗の可能性 判断材料を得てから決められる

6. 【実務】乗り換え前に必ず確保する8つのもの

これらを確保する前に契約を終了しないでください。契約終了後に依頼すると、応じてもらえない、あるいは追加費用が発生する可能性があります。

6-1. ポータルのスーパー管理者権限

最優先事項です。

HubSpotには「スーパー管理者」という最上位権限があり、これを持つユーザーはすべてのツールと設定にアクセスできます。加えて、パートナー従業員向けには「パートナー管理者」という権限があり、有料シートを消費せずにスーパー管理者と同等のアクセスが可能です。

確認すべきこと

  • 自社の社員に、スーパー管理者権限を持つ人がいるか
  • パートナー従業員がスーパー管理者になっていないか

HubSpotの「セキュリティー健全性」機能は、パートナーユーザーがスーパー管理者権限を持っている状態をセキュリティーリスクとして提示します。パートナーユーザーがスーパー管理者になっていると、請求の閲覧・管理、ユーザーの追加と削除など、アカウントにリスクを与えうる操作が可能になるためです。

つまりHubSpot自身が、パートナーに最上位権限を渡したままにしないことを推奨しています。

パートナー従業員がすでにスーパー管理者になっている場合の対処は2つです。

  1. パートナー従業員に、パートナーアカウントからの移行を依頼する
  2. 権限を編集して、スーパー管理者からパートナー管理者に変更する

なお、クライアントアカウントには最低1名のスーパー管理者が必要です。自社側にスーパー管理者がいない状態では、この変更自体ができません。まず自社の社員をスーパー管理者にすることから始めてください。

今すぐ確認する手順
HubSpot管理画面の設定から「ユーザーとチーム」を開き、スーパー管理者権限を持つユーザーの一覧を確認してください。自社ドメイン以外のメールアドレスが含まれていないかが最初のチェックポイントです。

6-2. 設計ドキュメント

以下を、成果物として受領してください。

  • オブジェクト構造の設計書(標準/カスタムオブジェクトの役割定義)
  • プロパティ一覧(名称、型、用途、参照箇所)
  • ライフサイクルステージの定義(各ステージが指す実際の状態)
  • パイプラインと取引ステージの定義(遷移条件を含む)
  • 権限設計(誰が何を見られるか)

6-3. ワークフローの一覧と目的

「何が動いているか」だけでなく「なぜ動いているか」が必要です。ワークフロー名の一覧をエクスポートするだけでは不十分で、以下がセットで必要です。

  • 各ワークフローの目的
  • トリガー条件と、その条件にした理由
  • 他のワークフローとの依存関係
  • 停止した場合に何が起きるか

6-4. カスタムコードと連携の仕様

  • API連携の仕様書(同期方向、頻度、項目マッピング、エラー時の挙動)
  • カスタムコードアクションのソースコード
  • 使用しているAPIキー・アクセストークンの一覧と管理場所
  • 外部サービスの管理画面へのアクセス権

APIキーがパートナー側の管理下にある場合、引き継ぎ時に連携が停止するリスクがあります。

6-5. 制作物の著作権とソースデータ

  • Webサイト・LPのデザインデータ、テンプレートのソース
  • メールテンプレート
  • 画像・動画などの素材と、その利用許諾範囲
  • 著作権の帰属(契約書の記載を確認)

6-6. ドメインとDNSの管理権

Content Hubでサイトを構築している場合、ドメインの管理権限とDNS設定の管理主体を確認してください。パートナー名義で取得されている場合は移管が必要です。

6-7. 契約書と、成果物の定義

  • 契約書の原本
  • 成果物として定義されているものの一覧
  • 契約終了時の引き渡し条項
  • 秘密保持の範囲

6-8. データのバックアップ

念のため、主要オブジェクトのデータをエクスポートしておいてください。HubSpotのデータは契約主体である自社に帰属しますが、移行作業の前後で比較できる状態を作っておくと安全です。


7. 引き継ぎの手順と期間

実務上、引き継ぎには1〜3か月を見ておいてください。ポータルの複雑さと、連携システムの数によって変動します。

Phase 1:現状把握(2〜4週間)

作業 内容
ポータル監査 オブジェクト、プロパティ、ワークフロー、リスト、連携の棚卸し
ドキュメント確認 既存資料の有無と、内容の妥当性
業務ヒアリング 実際の業務プロセスと、ツール上の表現の突き合わせ
利用実態の確認 誰がどの機能を、どの程度使っているか
設計意図の推定 記録がない部分のリバースエンジニアリング

この工程を省略した引き継ぎは、必ず失敗します。

Phase 2:評価と課題定義(2〜4週間)

作業 内容
ギャップ分析 業務プロセスとツール設計の乖離を特定
課題の優先順位づけ クリティカルなもの/許容できるものを分類
再設計方針の策定 何を残し、何を変え、何を捨てるか
ロードマップ作成 フェーズ分けと期間、工数の見積もり

「すべてを作り直す」という提案には注意してください。既存の設計にも理由があった可能性があり、全面刷新は現場の混乱と手戻りを招きます。

Phase 3:再設計と移行(4〜8週間)

作業 内容
優先度の高い箇所から改修 クリティカルな問題を先に解消
ドキュメント整備 設計意図を含めた資料の作成
権限の再設計 自社主体の権限構造へ
社内トレーニング 管理者向け/エンドユーザー向け
運用体制の確立 定例、レポーティング、改善サイクル

Phase 3で最も重要なのはドキュメント整備です。ここで「なぜこの設計なのか」を記録しなければ、数年後に同じ問題が再発します。


8. 契約解除の実務と注意点

8-1. HubSpotライセンス契約とパートナー契約は別

重要な前提です。HubSpotのライセンス契約は、パートナー経由で購入した場合でもHubSpot社との直接契約になるのが基本です。パートナーとの支援契約はそれとは別の契約です。

したがって、パートナーを変更してもポータル内のデータと設定はそのまま残ります。ツールを移行し直す必要はありません。

ただし例外もあるため、契約書で以下を確認してください。

  • HubSpotライセンスの契約名義は自社になっているか
  • パートナー保有のポータルに間借りする形になっていないか
  • 請求はHubSpotから直接来ているか、パートナー経由か

8-2. 確認すべき契約条項

項目 確認内容
契約期間 自動更新か。更新拒否の通知期限はいつか
解約通知期間 何日前までに通知が必要か
中途解約 違約金の有無と金額
成果物の引き渡し 契約終了時に何を受け取れるか
著作権 制作物の権利は誰に帰属するか
秘密保持 契約終了後の取り扱い

8-3. 円満に終えることの実利

感情的な対立は、引き継ぎ情報の質を下げます。設計意図の説明は、相手の善意に依存する部分が大きいためです。

  • 解約の意思は、契約上の通知期限より早めに伝える
  • 理由は事実ベースで伝え、人格批判はしない
  • 引き渡してほしい資料を具体的にリスト化して依頼する
  • 可能であれば、新旧パートナー間の引き継ぎミーティングを設定する

新旧パートナーの直接対話が実現すると、引き継ぎ期間は大幅に短縮されます。


9. 次のパートナーをどう選ぶか

同じ失敗を繰り返さないために、次の選定では以下を重点的に確認してください。

確認項目 具体的な質問
引き継ぎ経験 「他社からの引き継ぎ実績は何件ありますか」
ドキュメント 「成果物に設計ドキュメントは含まれますか。サンプルを見せてください」
設計意図の記録 「設計の理由を、どのような形で残しますか」
言語化能力 「弊社の業務を、どう理解されましたか」(初回商談で相手の説明を評価する)
継続支援の設計 「導入後の運用支援は、どういう体制と範囲になりますか」
契約範囲の柔軟性 「範囲外の課題を見つけた場合、どうされますか」
内製化 「支援終了時に、弊社に何が残りますか」

評価軸の全体像は、HubSpotパートナー完全ガイド|ティア制度の最新要件と失敗しない比較・選び方 の11の評価軸とRFPテンプレートをご覧ください。


10. 次は失敗しないために、契約時に決めておく5つのこと

乗り換えの本当の価値は、同じ構造を繰り返さないことにあります。

1. 成果物の定義に、ドキュメントを明記する
「設計書」「プロパティ定義書」「ワークフロー一覧(目的付き)」「連携仕様書」を、契約書の成果物欄に列挙してください。

2. 設計意図の記録を要件にする
「なぜこの設計にしたか」を残す形式を、あらかじめ合意しておきます。決定事項と、その理由、代替案を検討した記録があれば十分です。

3. スーパー管理者は自社が保持する
パートナーにはパートナー管理者権限を付与し、スーパー管理者は自社の社員が持ちます。担当者の退職に備え、最低2名を推奨します。

4. APIキー・外部サービスの管理主体を自社にする
連携先サービスのアカウントは自社名義で契約し、パートナーには利用権限を付与する形にしてください。

5. 四半期ごとにドキュメントの更新を受領する
一度作って終わりでは陳腐化します。定例の成果物として、更新版の受領を組み込んでください。


よくある質問(FAQ)

Q1. パートナーを変更すると、HubSpotのデータはどうなりますか?

残ります。HubSpotのライセンス契約はHubSpot社との直接契約であり、パートナーとの支援契約とは別だからです。ポータル内のコンタクト、取引、ワークフロー、レポートはそのまま維持されます。ただし契約名義がパートナー側になっている場合は例外があるため、契約書を確認してください。

Q2. 引き継ぎにはどれくらいの期間がかかりますか?

実務上は1〜3か月が目安です。ポータルの複雑さ、カスタムオブジェクトの有無、外部システム連携の数によって変動します。期間の大半は再構築ではなく、現状把握と設計意図の解読に費やされます。

Q3. 現行パートナーに知られずに相談できますか?

できます。現状評価の相談段階でポータルへのアクセスが必要になりますが、閲覧権限のみのユーザーを追加する形で対応可能です。ただし、最終的に乗り換える場合は、契約上の通知期限を守る必要があります。

Q4. まだ乗り換えを決めていないのですが、相談してよいですか?

問題ありません。むしろ、決める前の相談を推奨します。現状評価の結果、現行パートナーを継続すべきという結論になることもあります。その場合でも、次に何を依頼すべきかが明確になります。

Q5. パートナーがスーパー管理者権限を持っています。問題ですか?

HubSpotの「セキュリティー健全性」機能は、これをセキュリティーリスクとして提示します。パートナーユーザーがスーパー管理者になっていると、請求の閲覧・管理やユーザーの追加削除が可能になるためです。パートナー従業員向けには「パートナー管理者」権限が用意されているので、そちらへの変更を検討してください。なお変更するには、自社側にスーパー管理者が最低1名必要です。

Q6. パートナーとトラブルになった場合、HubSpotに相談できますか?

できます。顧客がHubSpotの従業員にパートナーに関する苦情を申し立てると、標準化されたプロセスが開始されます。複雑なケースではHubSpotのService Acceleration Teamが仲介に入り、パートナーによる補償や、契約範囲の追加といった解決策が検討されます。アクレディテーションを保有するパートナーの場合、記録上のマークが3件を超えると審査委員会の対象となり、認定の喪失につながる場合があります。

Q7. 引き継ぎ費用の相場はどれくらいですか?

現状評価(アセスメント)のみであれば数十万円規模、再設計と移行を含む本格的な引き継ぎでは、ポータルの規模と連携の複雑さに応じて変動します。いきなり全体を依頼するのではなく、まず現状評価だけを発注することで、必要な工数と費用が明確になります。

Q8. 社内担当者が退職して、何も分からない状態です。どうすればよいですか?

このケースでは、乗り換えより先に「現状の言語化」が必要です。現行パートナーが協力的であれば、まず設計意図の説明とドキュメント化を依頼してください。それが難しい場合、第三者による現状評価で仕組みを解読し、社内に定着させ直すことになります。

Q9. 「すべて作り直しましょう」と提案されました。妥当ですか?

慎重に判断してください。既存の設計にも当時の理由があった可能性があり、全面刷新は現場の混乱と手戻りを招きます。まず現状評価を行い、何を残し、何を変え、何を捨てるかを明確にしてから判断すべきです。全面刷新の提案を受けた場合は、「なぜ既存設計を活かせないのか」を具体的に説明してもらってください。

Q10. 円満に終えるべきですか?

可能であれば、そうすべきです。設計意図の説明は相手の善意に依存する部分が大きく、感情的な対立は引き継ぎ情報の質を直接下げます。解約理由は事実ベースで伝え、引き渡してほしい資料をリスト化して依頼してください。新旧パートナー間の引き継ぎミーティングが実現すれば、期間は大幅に短縮されます。


まとめ

  1. いきなり乗り換えないでください。原因が自社側にある場合、相手を変えても再発します
  2. 最初の一手は現状評価(セカンドオピニオン)。判断材料を得てから決めるほうが、コストもリスクも低くなります
  3. 引き継ぎの最大コストは「設計意図の喪失」。何が動いているかより、なぜそうなっているかが分からないことが問題です
  4. 契約終了前に8つのものを確保する。特にスーパー管理者権限は最優先です
  5. 期間は1〜3か月。大半は現状把握に費やされます
  6. 円満に終える。引き継ぎ情報の質は、相手の協力度に直結します
  7. 次の契約では、ドキュメントと設計意図の記録を成果物に明記する

関連記事


引き継ぎ・現状評価のご相談

株式会社クリエイティブホープは、HubSpotプラチナパートナーとして、他社パートナーからの引き継ぎを10社以上担当してきました。

私たちがこの領域に向き合ってきたのは、支援社数を増やすことよりも、1社ごとに深く長く関わることを選んできたからです。2015年からHubSpotに携わり、導入して終わりにしない体制を前提に設計しています。

こんなご相談を受け付けています

  • 現在の支援内容が妥当か、第三者として評価してほしい
  • 構築されたが業務に合っておらず、クリティカルな問題を抱えている
  • ドキュメントがなく、なぜこの設計なのか誰も説明できない
  • 社内担当者が退職し、何がどう動いているのか分からない
  • 乗り換えるべきか迷っているので、判断材料がほしい

まずは現状評価から

いきなり乗り換えのご提案はしません。現状を評価し、問題の所在を特定したうえで、現行パートナーを継続すべきならそうお伝えします。

引き継ぎには1〜3か月を要し、その大半は現状把握の工程です。だからこそ、評価だけを切り出してご依頼いただくことをおすすめしています。

無料で相談する → 支援メニューを見る → 支援事例を見る →


参考:一次情報

編集:株式会社クリエイティブホープ(HubSpot Platinum Partner)
2015年よりHubSpotパートナー/他社からの引き継ぎ実績10社以上/有資格者30名以上
著書『HubSpotワンストップマーケティング』(フォレスト出版・2022年)
https://www.creativehope.co.jp/hubspot

最終更新日:2026年8月29日

HubSpotの導入・活用支援ならクリエイティブホープ

株式会社クリエイティブホープは20年以上、業種業態を問わないDX・デジタルマーケティングのコンサルティング・伴走支援を行って参りました。単純なHubSpotへの専門性だけでなく、事業戦略から実行まで網羅的に支援してきた経験で、貴社のHubSpot環境の全体最適をご提案申し上げます。



HubSpot_Platinum_rank

SolutionPartner プラチナパートナー

HubSpotのプラチナパートナーとして多くの実績があります。HubSpot CRMの実装・移行、営業とマーケティングの連携、カスタマーサクセストレーニング、ナレッジベース・ヘルプデスクの実装・カスタムAPI連携など多数の実績がございます。

qualification

HubSpot資格取得 所有メンバー多数

導入や運用は30名を超えるHubSpotの有資格社員の中から、ご要望やプロジェクトに合わせて適切なメンバーをアサイン。豊富な知識や経験に対してこれまでHubSpot社から「Customer First in Japan 2021」の表彰やコミュニティでの活動を表彰されています。

systemintegration

システム連携・開発 複雑な案件支援

社内にはエンジニアがおり、HubSpotと他システムとの連携やUI改善開発など、よりHubSpotを活用できる環境構築を支援できます。HubSpotのUIエクステンションやAPI活用だけでなく、他システムの連携を多数ご支援実績がございます。