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メンバーの稼働率とアサインをデータで判断する方法

メンバーの稼働率とアサインをデータで判断する方法

「この案件、誰に任せられるか」——アサインの相談が、いつも同じメンバーの名前で終わっていないでしょうか。

できる人に仕事が集まるのは自然なことですが、その結果として特定のメンバーだけが常に逼迫し、他のメンバーに余力があることに誰も気づいていない、という状態はよく起きます。感覚で判断している限り、この偏りは見えません。

この記事では、稼働率をどう計算し、どう見れば、アサインの判断材料として使えるのかを整理します。

HubSpotで経営数字を扱う話の全体像はHubSpotで事業管理・管理会計を実現する方法【完全ガイド】にまとめています。

1. 稼働率の定義と計算の落とし穴

1-1. 分母を何にするか

稼働率は「案件に費やした時間 ÷ 分母」で計算しますが、この分母の置き方で数字の意味がまったく変わります。

分母 意味するもの 使いどころ
標準労働時間 月160時間などの固定値に対する割合 キャパシティに対する逼迫度を見る
実労働時間 残業を含む実際の勤務時間に対する割合 間接業務がどれだけ占めているかを見る
請求可能時間 顧客に請求できる時間の割合 収益性を見る

アサイン判断に使うなら、1つ目の標準労働時間を分母に置くのが分かりやすい形です。「あと何時間受けられるか」が直感的に読み取れます。

1-2. よくある落とし穴

分母が人によって違う。 時短勤務のメンバーの分母を160時間のままにすると、稼働率が実態より低く出ます。個人ごとの標準時間を設定できる形にしてください。

休暇が考慮されていない。 長期休暇を取った月は、当然ながら稼働時間が減ります。分母から休暇分を差し引かないと、その人が余力を持っているように見えます。

残業が見えなくなる。 標準160時間に対して200時間働いていれば稼働率は125%です。これを100%で頭打ちにする計算にすると、逼迫が見えなくなります。100%を超える表示を許容してください。

間接業務が計上されていない。 採用面接、社内会議、新人の指導といった時間は案件に紐づきませんが、確実にキャパシティを消費します。これを無視すると「余力あり」と誤判定します。

2. 色分けで一目で分かる状態にする

数字を並べただけの表からは、状況を読み取るのに時間がかかります。メンバー×月のマス目を稼働率で色分けすると、状態が一目で把握できます。

稼働率 状態 判断
70%未満 余力がある 新規案件のアサイン候補。継続する場合は要因を確認
70〜95% 適正 維持。小規模な追加なら可能
95〜110% 余裕がない 追加のアサインは避ける
110%超 逼迫 案件の再配分を検討。品質・納期・離職のリスク

基準値は組織によって調整してください。重要なのは、全員が同じ基準で色を見ていることです。

2-1. 先々の月も並べる

今月の状況だけを見ても、アサインの判断はできません。3〜6ヶ月先まで並べて、これから逼迫しそうな月が見えている状態が理想です。

先々の月については、確定した案件の予定工数に加えて、受注確度の高い案件の見込工数も含めると精度が上がります。

3. 稼働率100%が最適とは限らない

3-1. 常に100%は健全ではない

稼働率が高いほど良い、という考え方は危険です。全員が常時100%の状態では、次のことが起きます。

  • 急な案件が入ったときに受けられない
  • トラブル対応の余地がない
  • 提案・改善・学習の時間が取れない
  • 誰かが休むと計画が崩れる

受託ビジネスでは、新規の引き合いは予測どおりには来ません。ある程度の余力を持っていることが、機会損失を防ぐことにつながります。

3-2. 低すぎる場合も要因を確認する

逆に稼働率が低いまま続いているメンバーがいる場合、原因はいくつか考えられます。案件が割り当てられていない、スキルと案件の要求が合っていない、あるいは単に工数を入力していない——最後のケースは意外と多いので、まずデータの入力状況を確認してください。

4. 稼働率と粗利の関係

4-1. 稼働率が高くても利益が出ないことがある

稼働率は「時間が埋まっているか」を示す指標であって、「利益が出ているか」は示しません。

単価の低い案件で時間が埋まっていれば、稼働率は高くても粗利は薄いままです。むしろ、低採算の案件でメンバーが埋まっている状態は、高採算の案件を受けられないという意味で機会損失になります。

4-2. 2軸で見る

稼働率と、そのメンバーが関わっている案件の粗利率を並べて見てください。次の4通りに分かれます。

状態 読み取れること 対応
高稼働・高粗利 理想的だが、逼迫のリスクはある 負荷の分散を検討
高稼働・低粗利 低採算案件で埋まっている 案件の入れ替え、価格の見直し
低稼働・高粗利 余力がある。伸ばせる 優先的にアサイン
低稼働・低粗利 構造的な問題の可能性 案件配分とスキルの整合を確認

特に「高稼働・低粗利」は見落とされがちです。忙しそうに見えるため問題視されにくいのですが、組織全体の利益率を押し下げている状態です。

メンバー×月のキャパシティを、稼働率で色分け表示

HS viewのメンバー稼働画面では、月間の標準稼働時間を基準に、メンバーごとの稼働率を色分けして表示します。アサインの判断が感覚から数字に変わります。

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5. アサイン判断に必要なデータ

稼働率だけでは、実際の配置は決められません。次の3つを揃えると判断ができるようになります。

5-1. 先々の予定工数

すでに確定している案件について、今後どの月にどれだけの工数が必要かを持っておきます。案件の期間と総工数が分かれば、月ごとの配分は概算で構いません。

5-2. 受注確度と見込工数

提案中の案件についても、受注した場合に必要な工数を見込んでおきます。確度の高い案件を無視して満杯までアサインすると、受注した瞬間に破綻します。

CRMに受注確度のデータがあるなら、それを掛け合わせた期待値ベースの見込工数を出すこともできます。

5-3. スキルと経験

稼働率に余裕があっても、その案件を担当できるとは限りません。スキルセットや過去の担当実績を併せて確認する必要があります。

この情報を精緻に管理しようとすると運用が重くなるため、まずは「この領域を担当できるか」程度の粗い分類から始めるのが現実的です。

5-4. 判断の場を決める

データが揃っても、見る場がなければ活用されません。月次または隔週で、アサインを確認する会議体に組み込んでください。

その場で見るのは3点で十分です。今後3ヶ月で逼迫するメンバーはいるか、余力があるメンバーはいるか、確度の高い案件を受けられる体制はあるか。

6. 工数入力を定着させる

ここまでの内容はすべて、工数が記録されていることが前提です。そして多くの組織で、ここが最大の障壁になります。

6-1. 入力の負担を最小にする

担当案件が選択肢として出てくる、まとめて入力できる、前回の内容を再利用できる——この3つが揃っていれば、週次の入力は数分で終わります。逆に、案件名を毎回手入力させる形式では続きません。具体的な設計はHubSpotで工数を管理する方法|CRMの中で入力・集計を完結させる設計で扱っています。

6-2. 監視のための道具にしない

稼働率を個人の評価に直結させると、入力の数字が歪みます。稼働率を上げるために工数を多めに申告する、あるいは残業を隠すために少なく申告する——どちらも起こり得ます。

稼働率は案件配分を適正化するための道具であって、個人を評価するための指標ではない。この位置づけを明確に伝えてください。ここが曖昧なままだと、データの信頼性が失われます。

6-3. 結果を本人に返す

自分の稼働状況が見える、担当案件の状況が分かる、といった形で結果が返ってくると、入力の意味が変わります。「管理されるための作業」から「自分の状況を把握するための記録」になれば、定着率は上がります。

まとめ

  • 稼働率は分母の置き方で意味が変わる。アサイン判断なら標準労働時間が分かりやすい
  • 時短勤務・休暇・間接業務を考慮しないと、余力の判定を誤る
  • 100%で頭打ちにせず、超過を表示できるようにする
  • メンバー×月で色分けし、3〜6ヶ月先まで並べる
  • 稼働率が高くても利益は出ない。粗利率と2軸で見る
  • 「高稼働・低粗利」は忙しそうに見えるため見落とされやすい
  • 稼働率は案件配分のための道具。個人評価に直結させると数字が歪む

よくあるご質問

Q. 標準の稼働時間は何時間で設定すべきですか?

月160時間を基準とする組織が多いですが、営業日数によって月ごとに変動します。より正確に見たい場合は、その月の営業日数×1日の所定労働時間で算出してください。時短勤務のメンバーは個別に設定します。

Q. 管理職やバックオフィスのメンバーも同じ指標で見るべきですか?

案件に紐づく稼働が少ない職種を同じ基準で見ると、常に低稼働と判定されます。職種ごとに目標とする稼働率の水準を分けるか、そもそも対象から外すかを決めてください。

Q. 稼働率が高いメンバーの案件を減らそうとすると、本人が嫌がります。

担当している案件への責任感からくることが多いため、数字を示したうえで、品質と納期のリスクとして議論するのが有効です。あわせて、引き継ぎ先のメンバーを具体的に示すと受け入れられやすくなります。

Q. 見込の案件をどこまで工数に織り込むべきですか?

確度の高い案件(最終提案済み、内示ありなど)は織り込むことをおすすめします。初期段階の案件まで含めると、余力がないという判定ばかりになり、判断に使えなくなります。

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